年の瀬も迫ったある朝、日本は雨戸を開けるとその寒さに小さく震えた。
あんなに暑かった夏は一体どこに行ってしまったのだろうかと長年生きていても毎年思う。
それでもこの冬の朝の凛とした空気は大好きだった。
「…今日も冷えますね…」
新聞を取りに草履に履き替えてポストに行くと毛むくじゃらの塊がうずくまっていた。しかもかなり大きい。
何だろうと不思議に思い、じっと見つめていると、黄色とも金色ともとれるその毛玉はゆっくりと起きると小さく「にゃあ」と鳴いた。
「おや、猫さんでしたか。ん…?」
衰弱しているのだろうか起き上がりはしたものの、そこから動こうとはしない。
動けないのだろうか。今朝は氷点下近くまで下がったとニュースで言っていた。いつからいたのかは不明だが、その体毛に触れるとかなり冷え切ってしまっている。
「ちょっと、待ってくださいね」
日本は一度部屋へと戻り座布団を持って再度出てきた。
ぐったりとしたままの猫を抱きあげ座布団に乗せ部屋へと慌てて戻った。
ストーブを付けその傍へ猫を置く。エアコンも温度を上げ、部屋全体を大急ぎで温める。
「部屋はこれでいいとして…」
日本は台所へ行き冷蔵庫を開けと昨夜の残りの刺身を取り出した。
牛乳は飲めるか分からないので水を皿に入れ、部屋に戻る。
エアコンの温かい空気が部屋に充満しており、猫に触れると先程よりも温かい。
「…食べれますか?」
エアコンの強度を弱め、刺身と水を猫の前に差し出す。匂いに反応してかゆるゆると水を舐め始めた。