「マモル!」
空港のロビーで褐色の少年がこちらを見てにこにこと微笑んでいる。名を呼ばれた円堂は彼を見つけると同じく名前を呼んだ。
「ロココ!久しぶり!」
「マモル…背、すごく伸びたんだね」
FFIからもうすぐ一年が経とうとしていた。
丁度成長期である円堂の身長は驚くほどに伸びていて、以前はロココとは頭一つ分くらい違ったと思ったが、今では目線が同じだ。
「だろ?まだ伸びそうなんだよな。これでまたゴールが守れるようになる!」
本当に嬉しそうに自身の体を見つめる
円堂は一年前の面影を残しつつも確実に変化していた。
筋肉がついて以前より逞しくなった四肢と少しだけ凛々しくなった表情。少年から青年に変わるほんの一瞬の贅沢な期間の表情を見つめてロココは円堂の頬に口付けをした。
ざわざわと賑やかなロビーの視線が一瞬にして二人に集まる。

「ロ、ロココ?」
「挨拶だよ、アイサツ!ニホンではこうしないの?」
「お前…わかっててわざとやっただろ」
何の事?ととぼけるロココの手を引いてロビーから出る。
一年振りの互いの手は相変わらず固かった。それが心地いい。
 
稲妻町へ向かうためのバスを外で待っているとロココは小さく震えた。
「うぅ…こんなに寒いの初めてだよ」
南国育ちのロココが初めて感じる日本の空気は乾燥してひんやりとしていた。
二度目の海外だが、ライオコット島は自国に近く、温かかった。
道行く人の口から煙草のような煙が出ている事に気付いたロココはふぅと息を吐き出してみた。
温かい呼気に触れ、外気は水に変化し、水滴の表面で光が反射して白く見える。知識としては知っていたが、それが珍しく、目を丸くした。
息を吐き出してはその変化をひとしきり楽しんだ後、ロココはぽつりと呟いた。

「…師匠もマモルも…ここで生まれたんだよね、ジャパンで…」
感慨深く空を仰ぐロココもまた成長していた。身長は円堂ほど伸びてはいないが、その横顔は円堂と同じく少しだけ凛々しくなっていた。
「ロココ…。ようこそ、日本へ!」
にっこりと笑って円堂は右手を差し出した。二人は改めて握手をするとその手から色々なことを読み取った。
太くなった関節は突き指をして痛めたのだな、また強くなった必殺技を早く見せたい。
口にしなくても今日まで特訓をしてきたことがよくわかる。
しばらくしてバスが来たので、二人は荷物を係員に預けて乗り込んだ。
「じゃ、行こうぜ!」
「うん!」